かっこ仮。の世界。
ーー となると。
透理にできることと言えば、与えられた部屋の中でゴロゴロ転がっているか、庭先を眺めて、まあなんてきれい!とのほほんするくらいであった。
見兼ねた玉ちゃんが、針仕事でもやんなさいと仕事をくれた。
暇を持て余していた透理は、少しでも時間が潰せるなら、と喜んで飛び付いたのだか。
着物なんか縫えるかぁぁっー!!
と庭先で盛大に叫んだのは、つい昨日のこと。
ボタン付けや、裾上げ、ほつれ直し程度だと思ったのだ。
文明の利器の恩恵を受けまくって育った透理にそんな技術があるはずがない。
それでも玉ちゃんに罵倒されながら挑戦したことを褒めて欲しい。
結果として、ものの5分で玉ちゃんに匙を投げられた訳だが。
そんなわけで、今日も透理は暇を持て余していた。