かっこ仮。の世界。


遠い目をした透理に、清明は容赦ないひと言が追い打ちを掛ける。


「んー。透理は表情が豊かだから、虐めると本当に面白いよねぇ」


声に出して笑う清明に対して、透理が殺意を抱いたのは言うまでもないが、ひとまず透理には片付けなければならない目先の問題がある。


「すいません。わからないので教えてください…」


屈辱


その二文字が透理の頭と心を支配したが、そんなものを持っていたところで何の足しにもならない。


恨み辛みだけで生きていけるほど、透理は野生化していない。


「おや?ずいぶんと素直だねぇ?」

「私はいつも素直よっ!」

「僕が困っているのを楽しんでいたのに?」


やっぱりかーーーーーっ‼


何が「これも修行」よ!やっぱりあからさまに仕返しじゃないの!清明の陰険野郎!


透理の胸中を嵐が荒れ狂うが、そんな事を言ったら最後、状況が悪化するのみ。


となれば。


「すいませんごめんなさいもう二度としません」


ううう……哀しきかな居候。


諸悪の根源が清明であろうも、結局衣食住の全てを面倒見て貰っているわけで。


古今東西、家主最強。


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