その恋の行方は…【完】

突然訪ねてきたときには本当にびっくりした。

そして、こんなに遅い時間なのに制服にスリッパ。

カメラの映像からでも伺える疲労困憊した姿に

「そのままそこから動くな!!」

俺はインターホンを叩き切ってエレベーターに向かって走る。

うまく言えないが嫌な予感がしてあわてて降りて行った。

エレベーターをあわてて飛び出すと玄関ホールでしゃがみ込んで憔悴しきった姿。

それを実際に目にすると、

「ほのか?」

思わず名前で呼んでしまった。

それ以上言葉が出なくなりほのかが求めても来ていないのに膝をついて抱きしめてしまった。

ほのかが一瞬びくっとする。そして

「佐々木さん…」

とだけ言った。

俺がほのかを名前で呼んだのはこの最悪の時が初めてだった。

今までも何度もほのかを抱きしめたことはあった。

眞人がいなくなった時…

見つからなくて、過ぎていく年月の中で、辛くなった時…

特に春、桜の咲くころにはいなくなった記憶が蘇るのか取り乱すことが多かった。

そして、俺に抱擁を求めて手を伸ばしてきたときだけ…

俺は眞人の代わりにほのかを抱きしめた。俺を通して眞人を見ているほのかを…

それは、辛いことだったが、ほのかに必要な事なら、

他の男ではなく俺が抱きしめてやろうと思ってそうしてきた。

もちろん俺の感情はあとまわしにして…
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