ロング・ディスタンス
「それは私だってわかってるよ。冷やかしでは付き合ってないよ。成美たちが言うように、あの人はいい人だよ。それはわかってるつもり」
「そう。ならいいんだけどさ」
「ただ、神坂先生に抱いていたような強烈な情熱を感じないだけなの。あれこそまさに『恋い焦がれる』って感じだったからさ。長濱先生にはそこまでの感情はまだ湧かないし、もしかしたらこれからもずっとそうかもしれない。けど、あの人といると穏やかな心地よさを感じるのは確かなの。だから、しばらく一緒にいてみてもいいかもって思うの」
「そう」
 成美からしたら、友人が不倫相手と切れてくれればとりあえずOKで、彼女が新たに付き合い出した長濱と続くかどうか二の次である。上手くいけばそれに越したことはないけれど、恋人と別れたばかりでそんなにすぐにいい相手と巡り合うのは難しいから。

「とにかく、もうお天道様の下にさらせないような恋愛はするんじゃないよ。私はあんたのことすごく心配してたんだから」
「うん、わかった。成美、今まで心配かけてごめんね」
 栞が初めて成美に対して謝った。
「まあさ、済んでしまったことはもういいってことよ。後はあんたが幸せに暮らしてくれたら私はそれで安心だからさ」
「うん」
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