ロング・ディスタンス
 部屋に置かれていた新聞を読みながら待っていると、白衣姿の長身が姿を現した。

「児島さん」
 長濱に声を掛けられて栞は顔を上げる。
 目の前に彼がいる。
「長濱先生。お忙しいところすみません」
 栞は椅子から立ち上がる。
「いいんだ。それより病気の方はどう?」
 長濱は栞の痩せた体を見て驚いたが、努めて表情を変えないようにした。
「快方に向かっています。今日は病院に外出届を出してここへ来ました」
「そうかい。それは良かった」
 しばらく会話に間が空く。
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