ロング・ディスタンス
 三月初旬の空を見上げて成美はふと思った。親友は今どうしているだろうかと。
 自分がこの前送った結婚式の招待状に、彼女は返信をくれた。ただ出席の欄をマルで囲んだだけで、私信も何も書き添えてくれなかったけど。往信用ハガキの余白に「私は元気です」とか、それくらい書いてくれたっていいじゃないかと思った。同じ市に住んでいるのに、彼女とはもう長いこと会っていないから、こっちは彼女のことがとても気になっているのだ。なのに、ずい分素っ気ないじゃないか。

 友達の結婚が決まったなら、電話くらいよこすのが普通じゃないかと思う。普通の女の子だったら、友達のお相手がどんな男性かと気になってきいてくると思う。年齢は、職業は、ルックスは、なれ初めは……。それこそ色んな質問をぶつけてくると思う。
 なのにあの子ときたら、何の連絡もよこさないなんて、あまりに素っ気ないではないか。そりゃあ、こっちだってあの子に連絡したいけど、まだ独身の彼女に自分の結婚の知らせを、わざわざ電話をかけてするなんて、なんか自慢ぽいから遠慮しているのだ。
 でも、本当は他の誰より結婚の喜びを分かち合いたいのだ。
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