ロング・ディスタンス
「そうだね。君の言うことはわかるよ。美菜さんのことはあまり重く考えていなかったんだ。けど、そのことについては俺の認識が甘かった。もう、彼女からは何も受け取らないよ。というか、ああいうことがあったからにはしばらく彼女とは話もしないつもりだ。だからもう機嫌を直してほしいんだ」
 栞はまだ下を向いていて、グラスの氷をストローでカラカラとかき混ぜている。
「まだスッキリしない?」
「そういうわけじゃ……」
 言葉とは裏腹な思いが栞の顔に表れている。それを見た太一が思わず言ってしまう。
「言っておくけど俺だって、君にふられた時はかなり滅入ったんだからね。今回のことなんて俺がわざとやったことではないし、おあいこにしてくれたっていいじゃないか」
「それはわかってますよ!」
 それはわかっているけど、それを言われたらお終いじゃないかと栞は思う。
 一方、太一は彼女に申し訳なさを感じつつも、同時に女という生き物の面倒臭さを感じている。どうして男同士の付き合いのようにスッキリサッパリとわだかまりを水に流せないのだろうか。

 二人の間に不穏な空気が漂う。
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