ロング・ディスタンス
 栞は遠く成美の姿を眺めていた。
 純白のウェディングドレスに身を包んだ親友はびっくりするくらいきれいだ。そしてとても幸せそうだ。
 成美の隣にいる新郎はとても優しそうな人だ。彼女を見る彼の眼差しはとても温かい。

 目の前にある人間模様の全てが、自分を取り巻く世界とあまりに違いすぎる。周りの人々に祝福をされて結婚する親友と、日陰の身に耐えている自分。あまりにも違いすぎる。自分の惨めさを嫌というほど思い知らされる。
 そして、友人の幸せを心の底から100パーセント祝福できない、心の狭い自分がいる。さっきのブーケトスでは、名前を呼ばれても前に出ていく気がしなかった。周りの人の目も気になったが、どうしても体が動かなかった。神坂とあんな関係さえ結んでいなければ、こんな荒んだ気持ちになんてならなかっただろう。
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