ロング・ディスタンス
「ねえ、その会わせたい人って誰? 私の知ってる人かな?」
 まずは誰なのか知らないといけない。
「第一外科部インターンの長濱先生です」
 泉が答える。
「インターン!?」
 栞がたずねる。
「はい。あたしの彼と同じ科に所属する研修医の人です。彼と同じ時期に入局したから、仲良しみたいなんですよ。それで……」

 栞は記憶の糸を手繰り寄せて長濱なる人物を思い出そうとした。
 彼のことは知っている。「アラサーの研修医」と呼ばれている外科部の新人だ。医者を目指したのが遅かったので、三十になってやっと臨床研修を始めた人物だ。たまに病棟の廊下で、彼が年下の先輩医師や看護師にペコペコ謝っている姿を目にする。彼は脚があまり良くないようで、わずかに脚を引きずって歩いている。栞にとっては印象の薄い人物だ。
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