ロング・ディスタンス
「私、やっぱりどの男の人も神坂先生と比べちゃうのよね。先生の男としてスケールの大きさとか、医者としてスキルの高さを見ると、もう普通の男の人じゃ物足りなく感じちゃうのよ。先生とはいつかお別れしなきゃいけないとは思うんだけど、だからといってこれから先、他に好きな人が現れるとは思えないわ。こんなこと言ったら成美には贅沢だって言われるのはわかっているけど」
 成美は、栞の不倫相手が「神坂」という名前であることを知った。
「普通の女子だったら、若手の医者が接近してきたら飛びついちゃうものなんだけどねえ。それに目もくれないなんて、あんたの教祖様はよほどカリスマティックな存在なのね」
「先生のことをそんなふうに呼ばないで」
「だっていかにもカリスマティックな名前じゃん。それにあんたに対する態度も支配的だし」
 あんまり言うとこの前にみたいに怒り出すかもしれないと思いつつ、成美は本音を言った。
「彼はそういう人なのよ。私だけじゃなくて、誰にでも、職場の人にも圧倒的な存在感を放っているのよ」
「ふーん」
 成美は「彼も奥さんには頭が上がらないかもしれないかもね」と言おうとしてやめた。奥さんの話なんかしたら、また友人が不機嫌になりかねない。
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