ロング・ディスタンス
 それから、話は成美と光太郎の仕事や新婚生活に及んだ。
 長濱は笑顔を浮かべ、二人の話に相づちを打ったり、コメントをしたりしている。自分は出しゃばらずに、話好きな光太郎に花を持たせようとして、聞き役に回っているのを、成美は見て取った。長濱は謙虚さというものを知っている人なのかもしれないと彼女は思った。栞から彼が医者になる経緯を聞いていたが、20代の頃の苦労が彼のこのような性格を形作っているのだろう。
 友人が紹介された人物は、成美が予想していた以上に大きな魚かもしれない。光太郎がいなければ、彼女だって長濱のような男性に胸をときめかすだろう。
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