ロング・ディスタンス
 ふと栞の様子を見ると、彼女は上の空で三人のやり取りを聞いている。集中力が途切れたか。もともと穏やかな性格の子だったけど。
 成美はなんとなく友人の心中を察することができた。彼女は「何で他に好きな男がいるのに、こんな所で好きでもない男に愛想を振りまかないといけないのだろうか」と考えているのだろう。バーベキューの話に乗ってはみたものの、やはり自分の本当の気持ちをだましていることに葛藤しているのだろう。
 まあ、そんなに簡単に気持ちを変えることなんてできないのだろうけど、それにしたってもう少し気を遣ってくれないと、男性陣が怪訝に思う。 
 そういうところがダメだと成美は思った。はたして、友人は昔からこんなメランコリックな女だったのだろうか。場の雰囲気を気遣っている長濱とは対照的な態度だ。はっきり言って、栞が友人でなければ、こんな女には長濱みたいな男はもったいないと思うだろう。
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