ロング・ディスタンス
「ほら、栞。肉が切れたから補充して」
「あ、ハイハイ」
 成美に促された栞は物思いから我に返り、慌ててプレートからスペアリブを網の上に補充した。
「ほれ、カルビも! まだ網の上にスペースあるよ」
 いかにも教師らしい口調で、成美が友人を促す。

 医者と合コンなりバーベキューなりをする時、普通の女なら普段はズボラなくせに、やたらにかいがいしく動こうと張り切るものだ。それがこの子ときたら……。よほどあの教祖様に洗脳されているのか、他の教理は目に映らないらしい。
 いくら可愛くても、自分がもし異性だったとしたら、こんな女を好きになるだろうか。昔なじみだから、同性の友人だから付き合っているけど、自分が男だったらこんなふさぎ込んだ女とは付き合いたくない。もし彼女が長濱と付き合うようなことになっても、この調子では本性を見破られて、長くは続かないかもしれない。成美はため息を漏らしそうになった。
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