鬼神姫(仮)
「提案?」
銀が僅かに首を傾げた。その少し惚けたような表情には幼さが宿り、やはり彼を闘いに巻き込むことに躊躇いが生じそうになる。とはいえ、今、彼の決意をはっきりと聞いた。ならば、彼の気持ちを尊重すべきだ。雪弥は何度も迷いそうになる心をいつか強くなることでなくせたら、と思った。
「はい、提案です。現代の私達に主従関係も、誓いもありません。なので、同等の扱いをして欲しいのです」
雪弥は背筋を伸ばしてそう告げた。護られるだけの立場など嫌だった。共に立っていたかった。
「ええと、何か、姫さん扱いはやめろということか?」
銀の言葉に雪弥は頷いた。すると銀はまるで有り得ないものでも見るような目付きで雪弥を見てきた。雪弥はその視線の意味が解らず、何です、と返した。
「俺は賛成だ」
すると、突然襖が開け放たれ、そこには陽がにんまりと笑いながら立っていた。その後ろには巴が控えている。
「陽さんっ、いつからそこにっ?」
銀が慌てふためいた声を上げる。それを見た陽はついさっきだよ、と何でもないように答える。その後ろの巴は何故かおろおろとしていた。