鬼神姫(仮)
その二人が素直に教えてくれるとは思えない。理由は、知らなくても詮のないことだからではない。恐らく、教えたくないことなのだ。それも、自分本意に。
彼らの中で、知られたくないことがあるのだ。
だとすると、教えてもらうのは至難の技だろう。
「あの……俺、知ってますけど」
すると、凪がおずおずと手を挙げながら口を開いた。
「え?」
「は?」
雪弥と銀は同時に声を上げた。
まさか、こんな近くに知っている者がいるとは思わなかったのだ。しかも、凪。彼が全てを知っていることに何ら不思議はない。
彼は緋鬼であり、西の番人の血を引いているのだから。
「あ、でも、知らないなら、教えていいのかどうか」
凪は自分の発言を迂闊だと気付いたのか、口許を覆いながら目を泳がせる。
「教えなさい」
雪弥は凪に詰め寄るようにして、強い口調で言った。
「教えてくれ」
銀も凪の方を向き、彼に顔を近付けた。
「ええ……えぇと、あの」
凪はおどおどとしながら、雪弥と銀を交互に見る。雪弥はそれに、いいから、と言い、凪の目を真っ直ぐに見た。
「……嘗て、此処等一帯の土地は五つに分かれていました。鬼の住むのが中心、そしてその四方を囲むようにそれぞれの土地がありました。それぞれを花邑、霧原、氷沢、酉嶋が納めていたのです」
それらは番人の名前だ。
雪弥は固唾を飲んで凪の話を聞いていく。隣では銀も真剣な顔をしている。
「此処等一帯は、鬼と人間が共存していたのです」
──そんな時代があったのか。
雪弥はそれに小さな目眩と希望を同時に覚えた。