鬼神姫(仮)
我が家なのに、自分の所有地ではない処。それがその部屋だった。
水晶の向こうには白い布を頭から被り、顔の見えない者がいた。白く、重たそうな着物は体つきも判らない。男か女かもその姿からは判断出来なかったが、低めの声から男であると判った。
白く、細長い指をしていた。
その男は静かに告げた。
『雪弥の命(めい)は十七の生まれ日に尽きる』
雪弥の隣では緋川が着物の袖を口許にあてがい、眉をしかめていた。反対隣では浅黄が息を飲み、後ろでは蒼間が小さく声を漏らした。
明かりが一切射し込まない部屋では蝋燭の炎が揺らめいていた。そして、風も入り込まないというのに、蝋燭の炎はふ、と靡いて消えた。
『……抗う術は?』
緋川が眉をしかめたままその者に尋ねると、その者は白く細長い指を輝く水晶にそっと翳した。
『番人が集いし刻、運命は廻る』
その者はそれだけ告げるとその場に静かに倒れた。