鬼神姫(仮)
「貴方がたは鬼神姫の運命を変える為だけに生まれたのですよ?」
緋川は朱色の着物の裾を翻して銀に近付いた。煌びやかな刺繍が施されたそれは緋川によく似合っている。
「そんなの、そんなわけあるかっ」
銀は緋川を睨み付けながら反論をした。
「鬼神姫の番人ともあろう者が……。どうやら、かなり頭が悪いようですね」
緋川は元々人の神経を逆撫でするようなことを言う性格をしている。だがそれを雪弥に対してしたことはない。そこには確かな主従関係があるからだろう。
「面倒なことではありますが、一から説明しなくてはならないようですね」
銀が唇を噛み締めているのを無視ししながら緋川は続ける。まるで、そこに銀の意思などないかのような扱いだ。
「鬼神姫こと、雪弥様の命が十七歳で尽きると占われたのは十年前のことです」
緋川が話を始めると同時に雪弥はそのときのことを思い出した。
此れより地下にある薄暗い部屋。
部屋の中心には七色に輝く水晶が置いてあった。
その部屋の存在は知っていたものの、足を踏み入れるのはそのときが初めてだった。