鬼神姫(仮)
「……好きだろ?」
知羽は消えそうな声で言った。銀はそれに、まあ、と頷いた。だが、握り飯が嫌いな日本人はそうそういないと思うので、それはあまり答えになっていないように思えた。
「お前は、何鬼なんだ?」
銀が聞いたのは緋鬼、蒼鬼、黄鬼の三種類。緋川と蒼間と浅黄。そういえば、雪弥も何鬼に分類されるのだろう。
それとも、鬼神姫というのは鬼のなかでも特殊な鬼で、そんなふうに分類出来るものではないのか。
銀は溜め息を吐いてから、残っていた握り飯を頬張った。
例えここで番人をすると決めたとしても、自分は鬼のことなど何も知らない。鬼が実際どんな生き物なのか、人間とはどう違うのか。何も知らないのだ。
「何鬼でもいいだろ」
知羽はふいに突き放すような言い方をしてきた。言いたくないことなのか。銀にはその理由も見当が付かなかった。それほどまでに、鬼という生き物について知らないのだ。