think about you あの日の香りとすれ違うだけで溢れ出してしまう記憶がある
ぼうっとしたまま、本屋へ立ち寄る。

気晴らしに、ジャンプを買う。

毎週買ってるわけではないが、現実逃避したいときに、買ったりする。

漫画はいくつになっても好物だ。

ぐっちゃんは、いくつになっても少年だから、ジャンプを毎週買っていた。

私は弟が買っていたから、中身をある程度把握していて、会話のネタにしたりしていた。

ファッション誌のコーナーに回り込む。

最近は、バーゲンに行く時間がなくて、新作を定価で買っている。

一昔前なら、バーゲン前に試着して、バーゲンで買ったり、アウトレットに足をのばしたりしていた。

欲しいものはたくさんあった。

もうずいぶんなくなった。

すべて手に入れたから?

ちがう。

欲しいものを、探す時間がなくなったんだ。

夢を見たり、それを語り合ったり。

そんな時間をなくしていたんだ。

本だって、何を見たらいいのかもわからない。

一昔前ならティーン誌を見ていた。

アラサーなら?

ティーン誌を手に取ることが恥ずかしい。

いつのまにか、歳をとった。

いつのまにか、プロポーズされた。

そうか。

私はプロポーズされるような歳になったのだ。

自覚もなかった。

ボンヤリしていた訳ではないが、仕事のせいにして、恋愛を遠ざけていたようだ。

恋愛体質だと思っていた。

仕事人間だったのか。

もう、よくわからなくなってしまった。

ファッション誌横にある、ゼクシィを手に取る。

レジへ運ぶ。

なんて重たい雑誌だろう。

鏡に写る。

ゼクシィ片手のアラサー女。

似合いの構図だ。

なぜだろう、表情を曇らせてしまう。
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