ヘビロテ躁鬱女
「お前さんたち、喋っている間に手を動かしなさい! 狂子ちゃん、今日も宜しくね」


「はい!」


丸坊主で小柄。丸々と太った、温和な50歳。どこにでもいそうな、優しい目をした中年のおじさん。


刺身包丁をいつも磨いているイメージの原口料理長は、揉め事が起きないようにと、いつも目を光らせていた。


いつも緊迫している調理場……その中で、焼き場にはもう1人だけ、日本人が混じっていた。


勝気な男。


ほんのり茶色い髪の毛が、やたらとサラサラとし、背の低い27歳の気の強い男――。


横溝輝(よこみぞ・あきら)。私は、この男が苦手だった。
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