ヘビロテ躁鬱女
 こうしちゃいられない。私も鉄平と――


また鉄平へ視線を投げかけると、鉄平もこちらを見ていた。


――ドキッ。


目が合い、胸に矢が貫いてしまったかのように緊張が走った。


胸が苦しくて、やるせない……輝には、こんな気持ちになったこともなかった。


「輝さん、どんどん呑んで下さい! この店で一番の底なしなんですから、その名を汚さず遠慮しないでどーぞ!」


「……衣舞、お前飲ませ上手だな? その名は欲しくないけど、分ったよ。じゃんじゃん作れよ! どんどん飲み干したる!」


衣舞と輝はお酒が深く入れば入るほど盛り上がっているようだった。


――あれ……おかしい? 今私、心から安心している――? 彼氏を今にも取られそうな場面なのに。笑っちゃう。
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