ヘビロテ躁鬱女
「おーい! 狂子! どこ行ったー!?」


――輝!


近づいた唇は縮めた距離を止め、人差し指をあてた。


静かにしてという合図だった。


足音に耳を澄ます。


こんな状況を見られたら、きっと、ただじゃすまないだろう。


ボコボコに殴られ、もしかして痣だけならマシな方かも知れなかった。


――怖い……お願い、見つからないで!


脳裏には殴られた過去の場面が蘇る。


そっと鉄平から体を離し、その代わりに手を繋いだ。握り締めていないと不安だった。
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