ヘビロテ躁鬱女
「狂子……大人しいのね?」


「う、うん……あ、そうだ。まだ言ってなかったよね? 私ってほら、実家が嫌いじゃん? だから……一緒に住んでいたんだ」


衣舞は一瞬だけ怒りを見せ、能面のようになったが、驚きを見せた瞳は、すぐに垂れ目に戻った。


「仕方ないよ。彼女だし……狂子がずっと実家が嫌いなのは知っているよ……

じゃあ、鍵は持っているんだね。もう見えてきたよ? またここへ来れるなんて、私幸せ!」


――輝は、この台詞が耳にちゃんと届いたんだろうか? 遠まわしな告白なのに。


「うん。持ってる……ねぇ、私どうすれば良いかなぁ――?」
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