【完】春紫苑
「………え?」
「いや、何でもねーよ」
──嘘つき。
ボソッと呟いた彼の声は確かに聞こえた。
思い出してしまうのだろう、あの日を。
悲しいくらいに星が綺麗だった、あの日を。
将光から、大きすぎるものを奪っていった、あの日を。
「よし、アイスでも買ってきてやるよ。お前は苺で良いんだよな?」
「え、あ…うん」
無理矢理微笑んで見せる将光。
私は送り出すしかない。
「んじゃ、待ってろよ」
私の頭をポンポンと撫で、走っていった後ろ姿を。
私はただ、眺めてた。