だって好きなんだもん
だって好きなんだもん!
 引きずるようにして歩く私を、次々と生徒たちが追い抜いて行く。



 「菜摘ちゃーん! 元気ないよぉ!?」


 なんて優しい声をかけてくれる子もいたけど、私には先生と言う立場がある。


 「うん、ちょっと調子悪くて」



 無理矢理笑顔を作って、なんとか大人な返事をしていた。


 けれど、それ以上に心が擦り切れそうだった。



 ズキッ――



 いつも見る当たり前の光景のはずなのに、響ちゃんの両脇にすり寄る女子生徒をみて心が痛む。


 「せんせー好き~」

 「3年もたまには見てよ~」


 そんな生徒の声が聞こえてきて、やっぱり響ちゃんは人気なんだなって感じてしまう。


 響ちゃんは3年生は1クラスも持っていないから、3年生からはよく希望が出るって聞いたことがある。


 だって教え方がすごくおもしろくて、上手で覚えやすいんだもん。


 ――あ、なんかあの子たち大人っぽい


 24歳にもなるのに、相変わらずグラマラスには程遠い私は、普通に考えたら相手しなくてもいいはずの中学3年生の彼女らにも嫉妬してしまう。


 それに昨日のことがまだ頭から離れない私は、心臓がシクシクいって痛みが止まらない。


 なんだか頭まで痛くなってきた。


 そうやってぼーっと歩いていると、いつの間にかだらだら歩く響ちゃんと生徒2名に追いついてしまっていた。


 「おはよう、春日井せんせっ!」

 「どしたの? 元気ないねー」


 今しがた嫉妬したばかりの彼女たちに、可愛らしい声で心配されて立つ瀬がない。


 そんなダメな私に、普段はあまりかかわらないようにしている響ちゃんまでも


 「春日井先生、大丈夫ですか?」


 なんて先生モードで心配してくれた。それがすごく嬉しいくせに素直に受け止められない。



 「ちょ、ちょっと用事を思い出したので私行きますっ!」



 気が付けば私は響ちゃんに顔を見られたくなくて、心配してくれた生徒の声も、響ちゃんのこともマルッと無視して適当に言いつくろって走り去っていた。




 気持ちも体も重いまま、激しく走って学校に向かって、到着した職員室前で、はぁ、はぁと息を整えて入室する。


 「おはようございます」


 中から数名の先生の、おはようと返す声が聞こえて、私はロッカーに鞄をしまって準備に取り掛かった。


 必死で普段通りの自分を繕っていたら、私より少し遅れて来た2日酔いっぽい八木先生が私の方に近づいてきた。


 「春日井先生。おはようございます」

 「あ……おはよう、ございます」


 突き飛ばして帰ってしまった手前、私は気まずい気持ちになった。
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