止まない雨は無い。ーハッピーエンドのその先ー


その日、里穂は着替えを持ってきた。




「里穂、いつもありがとね。」



「ううん。


私は、こんな事しか出来ないから。」



左の薬指には、指輪。



「ねぇ…。


里穂って、結婚してるんだ。」




とっさに、左手を隠す。



「うん。


お姉ちゃんは、元気になってから


伝えようとしたんだ。」





里穂の、目が泳いでいる。



そして、汗が出て来ている。



里穂は、昔から隠し事が出来ない正直な優しい女の子だった。





「私、旦那様に会いたいな!


素敵な人なんだろうね!


私も、早く直夜さんと


結婚したいなぁ。」



最後は、…嫌味だ。



これで、どう出るかだね。




「そっ…そうだね。

今度、連れて来るね!」


目には、涙が溜まっていた。





「本当?


…楽しみにしてる!」




里穂は、急ぐように帰って行った。







「加奈ちゃん…。」




りんさんが、私の所にやって来た。




この間の事は、2人の秘密にしたのだ。





罪悪感で、りんさんを直視できない。




「りんさん…

ごめんなさい。


やっぱり、…隠せません。


純さんの胸を借りてしまいました!」





りんさんは、



私に、デコピンをした。



「事情が、事情だし…


今回は許すよ。


実は、純からも聞いてるの。」




抱き締めてくれた。




他人の私に、優しくしてくれる。




「辛かったね…。」







りんさんの優しさに、



涙が止まらなかった。




きっと、色々と隣で見ていたり…



私と話している間に、察してくれたのだろうな。
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