未成年・恭~【恭&綾シリーズ】2

確かに目の前にいるのは綾だ。

でも、俺が見続けていた携帯電話の中にいる綾や、3ヶ月前に会った綾ではなかった。

以前より長くなった髪が首筋にかかり、鎖骨の間にトップがきているネックレスを色っぽく演出している。

大きな瞳は引き込まれてしまうほどの力を感じた。


「持ってきたよ」


綾はバッグから一枚の紙を取り出し、俺の目の前で広げて見せた。


「本人を目の前にすると、あまり似てないね」


紙を両手で持ち、少し右側にずらして顔を覗かせ、小さく笑う綾の左手が俺の前に来る。

目に映った綾の薬指には、指輪がなかった。

俺は思わず綾の左手首を掴んでしまった。


「綾、指輪は? ――まさか、離婚したの?」


驚いた表情を見せたかと思うと、綾は口角を上げて俺を見る。


「恭ってすごいね。こんなにすぐばれるとは思わなかったのに」


右手で俺の右手の指を自分の左手首からゆっくりと外していきながら、綾は静かに言った。


「今までちゃんと聞いてくれていた恭には、ちゃんと会って話したかったから来たの」


騒がしくなっていく心の中を隠すように俺は綾に背を向けて、駅の出口を指す。


「俺、車で来てるから、乗ってよ」


「例のレガシィね。ほんとうに乗せてもらえるときが来たんだね」


綾の言葉を聞きながら俺は、(ほんとうに乗ってもらえるときが来たんだ)と、心の中で呟いた。
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