未成年・恭~【恭&綾シリーズ】2

重低音が響く中、その声はかき消される。

「なに?」と訊いた俺の声も同様に綾の耳には届かなかった。

二曲目からアッシュはハード&ローズの曲を三曲続けてやった。

綾の横顔をそっと見ると、瞳が潤んでいるように見えた。

それはアッシュの演奏に感激した涙ではないように感じた。

俺の心の中に不安が過ぎる。

その涙のわけを知りたい。



アンコールを終え、歓声のなかアッシュのメンバーが汗いっぱいの姿で手を高く振りっているときに俺は綾の手を引いてメテオの裏口ではなく正面出入り口から外に出た。

上野は何を言い出すかわからない。

上野を乗せたときのことを話すなら自分から話さなきゃと思った。

そして、綾の瞳に浮かんでいた涙のわけが気になる。

早く綾と二人だけで話したかった。


< 68 / 121 >

この作品をシェア

pagetop