くるうみ。~あなたと過ごした3日間~


サチお婆ちゃんが平らな氷を取り出してすぐ、美紀さんは取材を始める。


「お婆ちゃん、この氷はどこから切り出すんですか?」


「ほほ、そんなことを訊かれたのは久しぶりじゃな。この氷ば、あの山から切り出すんじゃ」


サチお婆ちゃんが指差した先にあるのは……未だに残雪が残る遠い山、山潮からゆうに100kmは離れてる龍ヶ峰だった。


標高が1000mを越す県内でも有数の塩川山脈に連なる高峰で、確か車道は通じてないはずだけど。どうやって切り出して運ぶのかな?


同じような疑問を美紀さんがぶつけると、サチお婆ちゃんはほっほっと笑って答えてくれた。


「そりゃあ全て人の手で切り出して、人が背負い下ろすんじゃ。
今はなんでも機械に頼ろうとするがの、この氷は自然の恵みで贈り物じゃ。機械でガーガーと切って車で運んでは有り難みが解らんくなる。
感謝の気持ちもなくなる。
今は氷は冷凍室でいつでも作れるけん、この氷ほど純粋で美味い氷じゃないけ。
じゃがのう……」


サチお婆ちゃんはそれから少し暗い顔をして俯いた。


病気だろうと痛みがあろうと、いつも明るく笑顔で元気なサチお婆ちゃんがこんな顔をするなんて、いったいどうしたんだろう?
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