くるうみ。~あなたと過ごした3日間~
「お婆ちゃん、どうかしたの? 何かあった?」


気になってあたしが訊いてみると、サチお婆ちゃんは氷に手を当てて沈んだまま話す。


「ごめんなあ……もうすぐこの龍ヶ峰の氷でかき氷がでぎんぐなるかもしれねえだ……」


「えっ、どうして!?」


一瞬、サチお婆ちゃんの体調が悪くなったのかと考えたけど、お婆ちゃんが継いだ言葉にはそれよりも予想がつかない理由が含まれてた。


「……業者さんが言ってたべが、最近龍ヶ峰の水の流れが変わっちまったとか。それで、天然水を引いて天然氷を作るのが難しくなっちまったとかよ。
氷も以前より時間をかけないと出来にくくなったとかも言うとったなあ。
今はまだ時間かけりゃ凍るみたいだげ、けんどもな、氷がもっと出来にくくなったら龍ヶ峰から切り出すのは止めにゃならんてな。
まあ……みんな商売じゃけん仕方ないけどが、寂しいもんじゃね。百年続いた龍ヶ峰の天然氷が無くなっちまうのも、時代の流れがの」


龍ヶ峰の天然氷は有名じゃないからあたしも詳しくなかったけど、百年も続いてたなんて地元民なのに知らなかった。


なんだか恥ずかしい……。身近なことだからこそ知らなかった事に。
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