くるうみ。~あなたと過ごした3日間~
遠くから聴こえてくる祭り囃子に、自然と足が速くなる。
中学生になる前は毎年必ず来てた龍神祭。
小3までは家族で、小4から中1までは亜美と一緒にやって来た。
中学生になったらこの時期は部活やテスト勉強で忙しくなったから来れなくなって、いつも妹の茉莉花のお土産で我慢してた。
こうして直に来るのは3年ぶりだけど、露店も灯りの提灯もお囃子も何一つ変わってない。
まるで、幼い時に戻ったように胸がワクワクしてきた。
「すごい人出ねぇ……私が育ったのは都会の端っこの新興住宅地だから、こういう夏祭りとかあんまり縁がなかったのよ。
だから、なんだか部外者みたいで気が引けるけど、こうして特別な空気の中に身を置くと、なんとなくお祭りの楽しさが解る気がするわ」
美紀さんが一眼レフカメラのファインダーを覗き込みながら言う。
「そうなんですか、なら、取材ついでに遊んでいけばいいんじゃないですか? やっぱり実際に体験してみるのとでは記事の鮮度に差が付くと思いますよ」
あたしが意見すれば、彼女からコツンと軽くデコピンを食らわされた。
「ま、いっぱしの口利いて。だけどまあ、瑠璃ちゃんの言うとおりだわ」