予言と未来
慌てて振り返ると、其処には1人の男性が居た。
肩迄 伸ばされた、漆黒の髪、切れ長の漆黒の瞳。美しいと言う表現が ぴったり来る容姿なのに、その瞳には殺伐とした何かが在った。
「……悪魔?」
「ご名答。」
愛光の呟きに、その男性は答える。容姿を見れば、直ぐ解る事なのに。
その時、愛光は隣のライネスが震えているのに気付いた。ウィロアと会った時と同じような、いや、それよりも酷く怯えている。
「……ヴィル……っ。」
「久し振りだねェ、ライネス。元気に してたかな?」
そう言って近寄って来るヴィル。綺麗な顔に優しい笑みを浮かべているのに、その姿に、何故か愛光すらも恐怖を覚えた。
「……貴方達 悪魔の目的は何?」
ライネスとヴィルの間に立ち、そう訊くと、ヴィルは立ち止まった。
「ライネスを連れてく事だよ。」
「何故?」
「そうだなぁ……。6年前の続き?」
そう言って にっこり笑うヴィル。
「…………。」
ライネスは、自らの肩を抱えるだけで、何も言わない。
「後ね、まだライネスに話してない事が在るんだ。」
「……話して、いない事?」
「そう。」
恐る恐る口を開いたライネスに、ヴィルは微笑み掛けた。