予言と未来



「だって、過去の事でしょう?」


「過去の事?」



僅かに眉を顰めて訊き返すライネスに、愛光は笑い掛けた。



「今のライネスは、その罪を悔やんでるように見えるもん。例え昔、罪を犯したんだとしても、今は後悔している。私は、今のライネスが好きなんだよ。過去の出来事なんて、関係無いよ。」



そう言うと、ライネスの瞳が揺れた。慌てて顔を背け、ライネスは呟く。



「……やっぱ、馬鹿だな、お前。こんな奴 好きに なるなんて。」


「馬鹿で良いよ。」


「……お前には、俺が犯した罪を、知っておいて欲しい。」


「その前に、1つ訊かせて? ライネスは、私の事 好き?」



そう訊くと、ライネスの肩が小さく震えた。



「…………。」


「…………。」



暫く お互い無言のままで、やがて彼は、背けていた顔を、ゆっくりと愛光に向けた。



「……好きだ。」



ひっそりと呟かれた彼の言葉が、愛光の心の中に ゆっくりと落ちる。



「……私の名前、呼んで? 呼んで、もう1度 好きだと言って?」



半ば冗談めかして言うと、ライネスの顔が ぼっと赤くなった。



「……あ……。」



名前を呼ぼうとして一端 止まり、もう1度 彼が口を開いた その時。



「こんな所で いちゃいちゃしてるなんて、平和な奴等だな。」



色気の在る男性の声が聴こえた。

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