予言と未来
「……は?」
“召喚”と言う聞き慣れない言葉に、愛光は ぽかんと口を開けた。
「……召喚って……。」
「ああ、解らない? 召喚って言うのはね、神霊に働き掛けて、別の世界の住人を自分の世界に招く、一種の魔法みたいなものだよ。」
ヴィルの説明に、漸く愛光は理解して頷く。
「その時に召喚されたのが俺なんだ。10年前のライネスはね、いじめに因って精神が大分 弱ってた。それでもね、彼が この予言の 切っ掛けを作った事に、変わりは無い。そう、ライネスが そんな事を しなければ、人間、君が空界に来て戦う必要なんて、無かったんだ。」
まるで、ライネスを恨めと言っているかのようなヴィルの言葉。ライネスは愛光から目を背け、俯くのみだ。
愛光は内心 呆れてしまった。うじうじ悩むライネスも、まるで中学生の いじめみたいに、仲間を裏切らせようとするヴィルの言葉も。
(遠回りばっかり。馬っ鹿じゃないの?)
「……それで?」
愛光が口を開くと、ヴィルは ん? と言う顔を した。
「それが何なの? 私さ、人界に居場所、無かったんだよね。だから、そんな私を空界に招いてくれて、こんなに沢山の仲間が出来て、初恋も して。凄く、楽しいの。だから、ライネスには逆に感謝する。」
そう言うと、ヴィルは口を開けて笑う。
「これは これは。面白い人間だね。まぁ、人間にしてみれば、自分達の界が滅びる訳じゃないし、この状況を楽しんでいるのかな。
でも、空界や天界の奴等が この事を知ったら、何て思うだろうね。」
「……ヴィル……っ。」
ライネスが何かに気付いたように声を上げる。
その瞬間、愛光の躰に激痛が走った。