夏風邪とモノグラムな指
「そろそろかなーと思ったから、買ってきたよ、飲み物とゼリー」


一つ年下のこの子はあたしの風邪に関しては鋭い。


毎年こうして、あたしが夏風邪を引いたその日にやってくる。


まあ、普段も週一のペースで家にどかどか上がり込んでくるけど。


コンビニのビニール袋に入っていたのは、ペットボトルのポカリと大好きな桃のゼリー。


「……ありがと」


体を起こさずに、袋ごと受け取る。


ベッドの脇の小さなテーブルに荷物を置くと、哲の手が額に触れた。


「だいぶ汗かいてるね」

「……ポカリ飲む」

「飲ませてあげようか」

「……遠慮します」


本当は飲ませて欲しかった、なんて言えるはずもない。


頭を上げると脳みそがグラングラン揺れる感じがして、思わず唸ってしまう。


「はいはい、飲ませてあげるから」


哲が体を起こすのを手伝ってくれて、哲の手に背中を支えられながらペットボトルの中身を飲む。


「……寝るから」

「もういいの?」

「……ん」


三分の一ほど飲んで、再びベッドに横になる。


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