夏風邪とモノグラムな指
「……哲」

「ん?」


哲の手は熱い。


あたしも熱いから気持ち悪く思ってしまうはずなのに、哲だけは心地よく感じる。


眼鏡をかけた奥の目がぱっちりしていて、眼鏡でもこの子は可愛い顔をしているのだとわかる。


「……帰る?」

「帰って欲しいなら帰るけど」


額の手が離れて、あたしは慌ててその手を掴んだ。


「いた方が、寝れるから……」

「うん」

「寝る……までは傍にいて」


ああ、こんなこと、風邪引いていなきゃ絶対に言えない。


こんな告白じみたこと、恥ずかしい。


「わかった」


くすっと笑った哲は、熱の上に羞恥で更に顔を赤くしたあたしを見て楽しんでいるように見えた。


< 4 / 12 >

この作品をシェア

pagetop