今すぐここで抱きしめて
「小柳さん、すみません。待ちましたか?」


慌てたようにやってきた飯田くんは私の隣に腰掛けると覗き込むようにして私の顔色を伺った。


思ったよりも近くに見えたその顔に無意識に反対側へと重心をかける。


「ううん、思ったより早かったわね。もう少しかかるのかと思ってお酒頼んじゃった。ごめんね、ちょっと待って」


私が出るときには、まだデスクでパソコンとにらめっこしている飯田くんが見えたからもう少しかかるかと思っていたのに。


「あ、いいですよ、ゆっくりで」


そう言ってくれたけど、私だけ飲んで待たせるなんてそんな酷なこと……


煽るようにして飲み干してカウンターにグラスを置くと、マスターがそっと金額の書いた紙を置いた。


財布を取り出そうとカバンを手にしたところで、その紙の上にお金が置かれる。


「えっ、ちょっと」


「ほら、行きますよ」


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