水ノ宮の陰陽師と巫女
「女が髪を振り回したときに飛んできたのは、針。だとしたら……」

そう逸る気持ちを抑えつつ、缶の蓋を開けた。

そこには、折れたのや、錆びたもの、ミシン針など使われなくなった針が入っていた。

邪気は……ないようだ。だけど、針を使った妖なら、この針に原因があるかと思ったのだが、何も悪い気配がない。

しかしそれはあの女が今ここにいないからかもしれない。確証がなくてもこの針は、封印しておくに越したことはない。

また一枚符を取出し、楓は缶に入った針が邪気がないとしても、女に使われないために、封印を施し、置いてあった場所に戻した。学校が終わったら家に持って帰るつもりで。

切印を作り胸の前に置き左から右にゆっくりと移動させ

「解」

と、唱え四隅の貼り付けた符を消滅させ教室に戻ろうとした。

教室を出る前に振り向き、考え直した。
またあの女が入り込まないように一応結界を張ろうと再び四枚の符を取出し、

「奉りし光臨の元により 邪気 悪鬼 滅せよ 結界」

唱え四枚の符を放った。

符は意志があるかのように、再び四隅の角、天井近くに張り付き色を消した。

「ふむ。完璧!外から人以外は入ることはできないからこれでよしっと。さーて戻らないと」

魔や邪、物の怪、妖の類は全てこの教室の中に入ることができない結界を張り直し、楓は教室へと戻った。
< 26 / 91 >

この作品をシェア

pagetop