水ノ宮の陰陽師と巫女
楓は家庭科被服室に戻った。

机も机の上のものも、何もかも授業を受けていた時のままになっていた。

片付けをすることもなく保健室に行ったのだし、その後、被服室で行われる授業は今日はなかったが、他の生徒の入室は一応禁止になっていた。

「私がここにいたとしても片付けに来たと言えば、追い出されることもないし。さて少し調べようか」

異空間となった時、自分の前に張った結界によって落ちたはずの針を……。

教室は異空間に一度ゆがめられたため、自分が教室のどの場所にいたかはわからない。隅々までその針を探し始めた。

机の下、教壇、窓の下……。

探し回った。

手も膝も床の汚れで黒く汚れてきた。

「やっぱり異空間でのものは、こっちには残らないか……」

ふぅとため息を吐きながら、呟いた。

周りを見れば授業途中のまま……。せめて自分のものだけでも片付けて行こうと、自分が座っていた席に向かい椅子に座った。

帰ったら祖父に叱られるなと、頭の中で考えながら、道具をしまっていると、何かが手に刺さった。

「いたっ」

片目をつむり、もう片方の目でそれを見ると、手の下の机に銀色の折れた針を見つけた。

これが手に刺さったのかと、思った瞬間、ロッカーに向かい、扉を開けた。

そこには、今まで被服の授業で使われ、そしてもう使われなくなった道具をしまっている。その中の一つの小さな缶の箱に目をやった。

「開ける前にっと」

楓はポケットから四枚の符を取出し教室の四隅に向かって放ち唱えた。

「カイト ヒラキシ キンズ 結界」

教室内に誰も入れないように結界を張った。




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