水ノ宮の陰陽師と巫女
「だからぁー。楓、もう無理だって言ってるでしょう?悪あがきしないの!」

茶目っ気を入れたような少女の言葉は、さらに楓の左腕に深い切り傷を刻んだ。

出血しすぎたせいか、楓がふらつきながら

「だから、あんた誰なのよ!」

息が切れながら再度問うが、

「さぁ~? 」

からかうようなはぐらかす言葉の後に

「あんたを消したいと思ってるのよ!」

と、重く恨みがこもっているような声で言葉が返ってきた。

楓は、私を消したい?それに私の名前を知っている……?ということは、私も相手のことを知ってるってこと?

クラクラする頭の中でそのことだけがグルグルと回りながら意識が遠のいていくのを感じていた。

「くっ!楓の結界は相変わらず、力が強いから崩さないのだけでも精一杯なのに!おい!楓!」

雅人が目を配る先には、ぐったりと横になりながら薄く眼を開けている楓の姿が映った。

「ふん!こんな結界!術者が倒れれば引き継いだものの力が相応でなければ崩せる!」

そう少女は言い、三度空を切り裂く風を結界に送った瞬間

パリィィィン。

楓が封じた結界が破られ、操り針子は結界の外に出た。

「主様……。ありがとうございます」

少女が立っている森の方へと、ズサズサと引きずりながら操り針子は移動していった。

「ったく!あんたってホント使えないわね!おびき出されたのもわからないなんて馬鹿としか言いようがない!次失敗したら……。わかってるわね!」

その言葉は、見下した罵倒の高い声と低い声で言い放った。

「今日はこれくらいにしてやる!」

少女の声がのどの奥から軋むような声と共に操り針子も消え去った。
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