水ノ宮の陰陽師と巫女
廊下からバタバタと走る音が聞こえ、ふすまが開いた。

「お父さん、楓が熱を出して!すぐ来てください」

おろおろと慌てた楓の父、真志が入ってきた。

どれ……と、腰を上げ、春治は部屋から出て楓の寝ている部屋へと真志と共に向かった。

一人部屋に残された雅人は

全て僕の責任だ……。春治おじいさんに頼まれていたのに。楓を守ってやってくれと。楓はきっちり封印結界を張っていたのに。
僕が遅れたから。ごめんな。楓、僕のせいで……。きっちりこの借りは返すから、早く良くなって治ってくれ。

と、膝に当てた両の手の握りこぶしには力が入り、プルプルと震えていた。

「雅人君……」

真志おじさんの声の方を見やると

「君のせいじゃないから。自分を責めてないかい?」

と、心配そうな顔をして、雅人にいつもと同じ穏やかな声で尋ねてきた。

「大丈夫です。でも……。申し訳ありません。春治おじいさんに頼まれていたのに……。僕がもう少し早く着いていれば」

喉の奥から絞り出すような声で雅人が謝ると

「それが自分を責めてるってことだよ。雅人君。ケガは楓が不注意だったのかもしれないのだから。雅人君のせいじゃないよ。うちのおじいさんに頼まれたと思うけど……」

真志の言葉を遮るように雅人は

「僕が退治しますから。楓は今は早く治るように……」

毅然とした声で答え、

それじゃ、僕はもう帰りますと言い、水ノ宮神社を後にした。
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