水ノ宮の陰陽師と巫女
何度も呼び鈴を押し、家の中から出てきたのは、楓の祖父、『春治』であった。

「なんじゃい!こんな夜中に!」

「すみません。僕が到着するのが遅れたために、楓が……」

楓を背負っている雅人を見るなり、

「真志さん!手当の準備を!雅人君も中に入りなさい!」

そう促され、雅人は楓を背負ったまま、家の中に入り、手当を手伝った。

春治に部屋を移され、雅人は二人であったことを話した。

「で、一体何があったんじゃ」

鋭く問いただす春治の目から見たものを全て答えろと言わんばかりの威圧感が漂っていた。

言うまでもなく、雅人は、事の次第を全て話した。

結界で操り針子を封じていたこと、左腕にケガを負ったので、その結界を「縛続」で引き継いだこと、楓の名前を知っているものが襲ってきたこと、そして……。

楓は毒が入っている攻撃を受け、腕に傷を負ったと。

ゆっくりと春治は瞼を落とし、息を吐くかのように

「ふむ……。」

ことの分析を始めた。

「操り針子を裏で糸を引いているものがいるということじゃな?そしてそのものの姿は見ていない。楓のことを知っているものだということでよいのじゃな?」

両の手を握りながら雅人は

「はい……」

と、うつむきながら一言だけ力なく答えた。

「すまぬが雅人君。楓のケガが治るまで、操り針子の退治たのめるか?無理ならわしが行くが……」

雅人は言葉と共に、顔を上げ

「僕の責任です。楓がケガをしたのは。だからこの件は僕がやります」

春治はただ、うむと頷き後は頼んだと、雅人に操り針子のことを任せた。

雅人は楓にケガを負わせてしまったこと、自分が春治に頼まれて楓の援護に行ったのに遅れてしまったことを後悔した。
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