水ノ宮の陰陽師と巫女
1年3組。楓は自分の教室の前に来た。

教室の戸を開けるなり

「おはようー」

と、言った瞬間、クラスの女子が一斉に楓の方に迫ってきた。

「楓、大丈夫なの?」

「呪われたの?」



「え? みんな何言ってるの……? 呪われたとか……」

戸惑う楓は、女子たちが言う言葉がわからず、聞き返した。

みんなは顔を見合わせるように「だって……ねぇ……」と言わんばかりに、病院にいなかった、休んでいたことで広まった噂のことがみんなの口から飛び出してきた。

あの日、異空間に引きずり込まれたとき、現世に戻ったが、楓自身以外はみんな気を失っていて記憶がない。そのおかげで翌日は病院での検査になり、楓がいないことで、次は自分が呪われるんじゃないかとか、勝手に悪いことが噂となっていたのだった。

「なぁんだ。病院にいなかったのはケガして熱出しちゃったからで……」

「でもケガって言ったって、2日も休むほどのものなら……」

皆、こわいじゃん!と言わんばかりの顔をしていた。

「それじゃ、みんな検査のあと、怪我したとかって人いるの?」

と、楓は切り替えして聞いてみると誰もいない事がわかった。

「ほら、私はただ単にコケて怪我しただけだし、呪いなんてあるわけないじゃない」

と、クスクスと笑いながら楓は言いかえしていた。

それより楓が気になっていたのは、破られた佳織の結界だ。

佳織を見つけるなり、声をかけようとした瞬間

「ほら!楓困ってるじゃん!その話はデマだってこともわかったんだから―!」

散った散ったといわんばかりに、言ったのは、幼稚園の時からの友人、まどかだった。

「大丈夫?楓」

「うん。平気。だけど私が休んでた間に変な噂たっちゃったんだねぇ」

「まぁね。あっ、それより楓、休んでた分のノートのコピーいる?」

「あるの?いるいる!」

ニッコリ笑ってまどかは、それじゃ放課後までに作っておくからと言い、席に着いた。

もうチャイムが鳴ってホームルームが始まる時間だった。
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