水ノ宮の陰陽師と巫女
翌日の昼休み、楓は一人、屋上でお昼を過ごしていた。

「策って言ってもねぇ……」

はぁ……とため息しか出てこない。

ガチャっと、扉があく音がし、誰かが来た。

楓にとって、今は誰が来ても話をする気力すらないので、音のする方向にむこうともしなかった。

が……隣に座ってきた人がいた。

「ココ、あいてますか? 」

「あぁ、どうぞ……」

空を見上げながら、声の主に答えていた。

「なにぼんやりしてんだよ!」

「ンー?作戦とかって言ってもねぇと思ってさ……」

「というか、お前、隣に誰が座ってきた奴が変な奴で襲われたらどうするつもりだったんだ? 」

「え?だって今来たのは雅人じゃない。相手がわかってたら、別にどうもしないけど……」

楓の無頓着さにあきれた雅人は、

「おまえなぁ……、一応女の子だろう……。少しは危機管理ってものをだな……」

「へ? そりゃ、その時々でしてるからいいじゃない」

完全なる開き直りだった。雅人に気を使うほどでもないと、楓はいつも思っている。小さい頃から、遊んだり、妖退治に行ったりしていたのだから……と。

「それでね、雅人……」

ベンチに寄りかかって仰け反っていた背を元に戻し、

「昨日放った式神、戻ってきたけど、収穫は何もなしなのよね。そんなのでどんな作戦をたてれると思う? 」

楓が雅人に相談をするようなことは、滅多にないので、聞かれた雅人はちょっとキョトンとした。

「情報がないわけじゃないだろう? 現に操り針子は、一度楓が対峙して、封印結界まで張った。それには逃げれなかった。『主と呼ばれる者』が、その時封印結界を解くのに……」

そこまで言って雅人は黙りこくってしまった。
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