水ノ宮の陰陽師と巫女
午後11時。

目覚まし時計が鳴り時間を確認すると、目をこすりながら楓は起きた。

白衣に袴という妖退治に行くいつもの装束に着替え始めた。

腰にはいつも結界の位置を指定するために使うくないと、懐には数枚の結界を張るための霊符や、妖を滅するための使う霊符などを確認し、再び懐にしまいこんだ。

玄関で草鞋を履き、ひもが緩まないようにしっかりと、草鞋のひもを結び直していると

「はい、お弁当」

夜食用に作ってくれたお弁当を父が持ってきてくれていた。

「大丈夫かい? おじいちゃんに聞いたけど、今日全部片付けるって」

「うん、ありがとう。絶対に、全部片付けるから、大丈夫」

「僕も手伝えたらいいんだけど……」

「お父さんはいいの。見えないんだし……。それにね、おばあちゃんとも約束してるんだ」

「おばあちゃんと……? 」

少しためらないながら、静かに楓は

「うん……おばあちゃん……」

父に心配をかけまいと、続けた。

「だから、お父さんは心配しなくても大丈夫!私が守るから!お弁当ありがとう」

つとめていつものように明るくいい、「それじゃ、行ってきます」

と、言いかけた時、

「そうそう、お弁当ね、雅人君の分も入ってるから」

ニコニコと笑いながら父は言った。

遊びに行くわけじゃないのに……と少し呆れはしたが、相変わらず父はみんなの為に自分ができることをしてるんだと、思うと怒る気にもなれず、逆に、いつも本当にありがとうという言葉しか出てこなかった。

楓は苦笑交じりに笑い

「終わったら雅人と一緒に食べようかな?それじゃ、行ってきます」

玄関をあけ、いつも通っている学校、『森里学園』へと向かった。
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