水ノ宮の陰陽師と巫女
学校の校門は閉ざされている。

校門の扉の上に右手をかけて、飛び越え学園内に入った。

校舎の入り口の少しでっぱりの屋根に飛び移り、荷物を置いた。

「よっ!楓」

その声と共に雅人が現れた。時刻は午後11時30分。

「アイツが言った時間まで30分弱か……」

そう言いう雅人と共に、校庭内を一通り歩いて、何か変わったところはないかを確認しながら、一周した。

「それより楓……、その荷物なんだ? 」

「ン? あぁ、それ? この仕事が終わってから……ねっ」

軽く笑みを浮かべながら楓は言った。

腕時計を気にしながら、待つのは時間の流れが遅く感じる。

約束の時間は24時。その時間までの1分が長く感じられるが、時間が止まるわけではない。刻々と一秒一秒時は進んでいる。

楓は焦燥感と苛立ちの中にいた。

昨夜、もう一体だけ別の理由で放った式神もまだ戻っていないのだ。消された気配もないのだが、何をしている……と、時計を見ながら、気をもんでいた。



突然、突風が吹いた。それと同時に、ふわりと頭上から白い着物、羽織を羽織った、操り針子が現れた。

24時。確かに昨日、『主と呼ばれる者』が指示した時間通りに現れたのだ。

くっくっく……と不気味に薄らと笑みを浮かべる操り針子は、ゆっくりと地面に降り立った。

「今までよくも邪魔をしてくれたなぁ……。お前たちの墓はここだ!」

今までの対峙での恨みの念を込めたような重々しさのある言葉は、甲高く響いた。

楓はすかさず腰のくないを取出し、雅人は符を構えて、二人は操り針子から視線を外すことなく、言った。

「お前の主はどうした!」


『主と呼ばれる者』の姿がないのだ!


「主様が来る前にお前たちを葬ってやる!」

ふふふと、薄ら笑いを浮かべながら頭を振り始めた。

最初から針のように細い攻撃かっ!

二人とも一歩後ろに飛び下がり、目を合わせた瞬間、互いは双方に散った。
< 83 / 91 >

この作品をシェア

pagetop