雨音を聴きながら



びゅうと風が吹き抜けた。


オフィス街のビルの谷間を踊る風は基本的に強いけど、さらに力強さが感じられる。


風は通りを往来するビジネスマンやOLの髪や服を一通り乱して、一気に舞い上がってく。


もちろん、私も巻き添えに。


定時で仕事を終えて悠々と駅へと向かう私の爽やかなショートボブを、見事にくしゃくしゃにして逃げていく。


よくもやってくれたわね……


風を追いかけて、空を見上げた。


つんつんとしたビルの先端が突き刺す狭い空は、思ったよりも黒い。


髪を撫でつけながら、ふと思った。


雨が降る。


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