雨音を聴きながら

ぽたりと頬に滴が触れた。


もう一つ、また一つ、滴が目の前を通り過ぎていく。


ぷんと鼻をつく臭い。焼けたアスファルトに描かれた大きな水玉模様が、みるみるうちに黒に染まってく。


とりあえず、目についた近くの雑居ビルの階段に避難する。


滴はあっという間に、雨へと変わった。


慌てて駆けていく人たちを見ながら、バッグの中に手を突っ込む。かわいそうにと同情する反面、ちょっとした優越感。


『持ってて良かった折り畳み傘』


なんて、昔よく観たお昼番組のフレーズみたいな言葉を心の中で呟いて傘を開く。


バッグには、常に折り畳み傘を入れている。こんな時期に、折り畳み傘も持たないで外出するなんて危険すぎる。


だって、私は雨女。