そのキスの代償は…(Berry’s版)【完】
お互いの欲望は、底なし。どちらの抱える闇が深いのだろう。
どちらの抱えるしがらみが多いのだろう。

でも二人で会うとき二人が重なるときは、その全てを捨て去る。
本能をむき出しにした、二人以外何もない。
快感以外は…いらない。


私を見つめる視線がどことなく遠いことがある。
それは、行為に没頭しているときで…あの人はここにいなくなる。


上から感じる視線の先に自分ではない何かを
見透かしている気がする時も…あった。


その指先を…
その唇を…
感じるたびにこの人が女の扱いに慣れていると感じる。

よくわからないけど、あの人の心には誰かが住んでいる。
ずっとその人を見つめながら、目の前の私を…
だからあの人に…私は見えていない。





でもそれでいい。それでもいいから…



私に必要なのはあの人の躰。
そう思うことで割り切ってきた。あの人も私にそれだけを望んだ。


今までの私にはこんなこと、絶対に考えられない行動。感情。
本能のままに…
ただあの人に溺れていく…
泥濘にはまっていく。


その泥濘にはまることを受け入れている自分がいる。
これからも、許される時間…
そうするつもり。


彼には妻子がいる。
そして、いつ転勤になるかわからない上司なのだから。
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