そのキスの代償は…(Berry’s版)【完】

無欲

彼女は無欲な女だ。
それは、見た目だけでなく俺に対する態度まで…
カノジョに似ている。

俺の事を一番に考えて、俺の前から姿を消したカノジョ。

俺の言う契約を守り、それ以上何も求めてこない彼女。

俺はそんな稀有な女二人に出会った幸運な男のはずだったのに、
それを全部、自分からぶち壊しにした。

だからあんな妻(おんな)しか、手に入れられない。


躰を親密に重ねた後。彼女は気を失うように眠りに落ちる。

その寝顔を眺めながら「すまない」
それしか言えない自分が情けない。


翌朝、彼女の切ない顔を見るのが辛くて、
もっと切ない顔をしているであろう俺の顔が見られたくなくて、
俺は彼女が目覚める前に、その部屋を逃げるように去る。


そして、休み明けの月曜日。
それは俺にとっては拷問のような1日になる。

会社で同僚の振りをして会うのが、何よりも…一番辛かった。
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